258 研究領域の現状
古 賀 信 康(准教授) (2 0 1 4 年 4 月 1 日着任)
A-1) 専門領域:生物物理学,タンパク質分子デザイン
A-2) 研究課題:
a) 計算および生化学的アプローチによるタンパク質分子デザイン
A-3) 研究活動の概略と主な成果
望みの機能を持ったタンパク質分子を自在にデザインすることが可能になれば,細胞の制御・設計や医療への貢献, さらには新規酵素やマテリアル開発による産業への応用が期待される。我々は,タンパク質分子を主鎖構造を含め て完全にゼロからデザインすること,加えて自然界のタンパク質分子を大きく改造することにより,望みのタンパク 質分子を創製する理論と技術の開発を行った。
a) αβ 型タンパク質構造のデザイン。これまでに2次構造パターンやループの長さといった局所主鎖構造が3次構造ト
ポロジーの決定に重要であることを発見し,それらの関係性を3つのルールとして体系化している。本研究では,テー ラメイドに自在にタンパク質立体構造をデザインする技術の開発を目指して,タンパク質構造を主鎖二面角パターン として捉えることによりルールの拡張を行った。拡張したルールを使って様々なトポロジーや形,そして大きさのαβ タンパク質構造を計算機を用いてデザインし,それらを大腸菌に組み込み発現・精製し,生化学実験によって折り 畳み能を調べたところ,デザイン配列は安定な構造を形成していた。さらに,これらの構造をNMR によって解いた ところ,計算機上で構築したデザインモデルと主鎖二面角レベルで正確に一致していた。
b) α ヘリックスからなるタンパク質構造のデザイン。複数の α ヘリックスが集まった構造は極めて多様な構造を生み出 し,またその構造は柔軟であり機能発現に重要な役割を果たしている。そこで,α ヘリカルなタンパク質構造を自在
にデザインするための手法の開発を行った。まず,自然界のタンパク質構造を解析することにより,ヘリックス同士 をつなぐループに典型的なループパターンが存在することを明らかにし,次にこれらループパターンを組み合わせる ことにより多様なタンパク質主鎖構造のモデリングに成功した。
c) 動的機能を発現する自然界のタンパク質分子の改造。自然界には,ATP 加水分解のエネルギーを利用して構造変化
することにより機能を発現する分子モータータンパク質が存在する。このようなモータータンパク質がどのようにし て動的機能を発現しているのか,F1-ATPase および V1-ATPase を改造することにより,そのメカニズムに迫った。
B-1) 学術論文
Y.-R. LIN, *N. KOGA, R. TATSUMI-KOGA, G. LIU, A. F. CLOUSER, G. T. MONTELIONE and *D. BAKER,
“Control over Overall Shape and Size in De Novo Designed Proteins,” Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 112(40), E5478–5485 (2015).
B-4) 招待講演(* 基調講演)
N. KOGA, 「創って分かるタンパク質分子の動作原理」, 定量生物の会第7回年会, 九州大学, 福岡市, 2015年 1月.
N. KOGA, “Protein design from scratch for understanding principles for folding,” Supramolecular Dynamics at the interface of Chemistry and Biology, アジア連携分子研研究会, 分子科学研究所, 岡崎市, 2015年6月.
研究領域の現状 259 N. KOGA, 「タンパク質分子デザインの現状と展望」, CBI 学会, 東京工業大学キャンパス・イノベーションセンター , 東京, 2015年 6月.
N. KOGA, 「主鎖二面角パターンを用いたタンパク質立体構造デザイン」, 第15回日本蛋白質科学会年会, ワークショップ:
天然モノと人工モノ,両面から迫る最新のタンパク質構造観, あわぎんホール, 徳島市, 2015年 6月.
N. KOGA, “Design of ideal protein structures,” The 15th KIAS Conference on Protein Structure and Function, Korea Institute for Advanced Study, Seoul (Korea), 2015年9月.*
N. KOGA, “A synthetic approach to understanding protein molecules,” JST CREST-PRESTO joint international symposium,
Structural Biological Dynamics: From Molecules to Life with 60 trillion Cells, The University of Tokyo, Tokyo (Japan), 2015 年11月.
N. KOGA, “De novo design of various alpha-beta protein structures,” 理化学研究所横浜キャンパス, 横浜, 2015年12月.
B-6) 受賞,表彰
古賀信康, 第13回日本蛋白質科学会年会若手奨励賞 (2013). 古賀信康, 第51回日本生物物理学会年会若手奨励賞 (2013).
B-7) 学会および社会的活動
学協会役員等
日本生物物理学会平成27年度分野別専門委員:タンパク質設計・ドラッグデザイン (2015).
B-8) 大学での講義,客員
中央大学理工学部物理学科, 物理学特別講義第三, 2015年 9月 4日.
総合研究大学院大学物理科学研究科, 「基礎生体分子科学」, 2015年 11月 24日. 総合研究大学院大学物理科学研究科, 「構造生体分子科学」, 2015年 12月1日.
The Winter School of Sokendai Asian CORE, “Protein design from scratch,” 岡崎カンファレンスセンター(岡崎市), 2015年1
月16日.
B-10) 競争的資金
科研費若手研究(A), 「改造して理解するモータータンパク質F1-ATPase の動作原理」, 古賀信康 (2015年 –2019年).
科学技術振興機構さきがけ研究, 「細胞機能の制御・設計に向けたアロステリックタンパク質の人工設計」, 古賀信康 (2014 年–2017年).
日本学術振興会海外特別研究員, 「タンパク質分子構造の理論研究:構造変化する機能性タンパク質のデザイン」, 古賀信 康(2007年 –2009年).
日本学術振興会特別研究員DC1, 「タンパク質機能調節の分子機構の理論研究:構造の柔らかさとアロステリック効果」, 古 賀信康 (2003年 –2006年).
260 研究領域の現状 C) 研究活動の課題と展望
2014年4月に着任し,計算機および生化学実験両⽅を用いてタンパク質分子をデザインする研究グループをスタートさせ た。望みの機能を持つタンパク質分子を自在にデザインするための手法の確立を目指して,①タンパク質分子の構造と機能 を完全にゼロからデザインすること,②進化の産物である自然界のタンパク質を大きく改造すること,これら2本柱で研究を 進める。計算機および生化学実験のための準備は整ってきたので,来年度からは計算機デザインと生化学実験のサイクル をいかに多く回すかが重要となる。